1.相次ぐ企業不祥事は何が問題か


 
 現在、実に多くの企業不祥事が多発している。
 たとえば、安全に関する事故・事件に限ってみても、食中毒、薬害エイズ、リコール隠し、臨界事故、医療ミスなど
 実に多種多様な企業不祥事が発生しており、日本国民の安全が危機にさらされる異常な事態が続いている。
  
  最近の企業不祥事の多くは内部告発によって明らかになっているが、内部告発の増加は、
 従前尊重されてきた企業の論理ではなく、個人・消費者の論理を優先することが妥当とする社会になった結果と
 見ることができるのではないだろうか。
 企業の論理と個人・消費者の論理が対立する場面において、個人・消費者の論理を優先させたことが
 内部告発につながったものといえるだろう。
 また、内部告発が急速に企業の健全化への有力な手段として消費者や国民に認知されつつある。
 それは内部告発がなければ企業が消費者の利益に反することを行なっていたことがわからなかったという
 消費者や国民の思いである。

  1つの企業に生涯勤める時代からキャリアアップや適性な仕事を求めての転職が当たり前の時代へ、
 さらには企業の論理より個人の論理の尊重、多様な個人の価値観の受容、
 グローバル化時代における公正、公平な活動の要請、リストラの日常化、インターネット利用人口の急激な増加、
 情報公開の要請など社会は猛スピードで変化している。
 つまり社会や消費者は変化をしているにもかかわらず、企業はその変化に対応できないままに相変わらず
 従前の論理のままの企業経営を行っているのではないか。
 企業不祥事多発の根本原因は企業と社会・消費者の意識のギャップにあるといえよう。