◆調査を通して感じたこと

   今回の調査で、企業に差異はあるものの
  食品関連企業において消費者の信頼を回復するために、
  コンプライアンス経営の取り組みが行われつつあることがわかりました。
  コンプライアンス経営を行うにあたり重要な役割を果たす自主行動基準。
  多くの企業が自主行動基準を策定し、公表していることもその現われでしょう。

   しかし、今回の調査を通して自主行動基準を初めとする
  企業の情報開示の姿勢に大変差があることも明らかになりました。

   まず、ホームページです。
  今回の調査では企業ごとのホームページを閲覧し、
  論文でご紹介した調査項目について確認をしました。
  食料品が私たちの生活に身近であるがゆえに、調査した企業のほとんどが知名度の高い、
  誰もが企業名や、どのような製品を製造、販売しているかを知っているであろうと思われる企業でした。

   しかしながら、各社のホームページで公開されている情報の種類とその内容には
  大きな差がありました。大きく分けてみると以下の3つになります。
  
 @ 会社情報(企業理念・IR報告など)、
   環境・社会報告書、商品情報、消費者への情報提供(消費者相談のフィードバック・健康・レシピなど)

 A 会社情報(企業理念・IR報告など)、商品情報、消費者への情報提供(健康・レシピなど)

 B 会社情報(会社案内) 商品情報のみ

   まさにコンプライアンスにかかわる情報までを含めて開示しようという
  姿勢が見られるホームページから
  「とりあえず会社を知ってもらおう」「とにかく商品情報を載せよう」
  「消費者の関心が高そうな情報を提供しておこう」という視点で作成されたと思われるようなものまで
  企業の情報開示の姿勢が顕著に現れていました。

   また、調査中に次のような出来事がありました。
  ホームページ上ではコンプライアンスに関わる掲載がなかったため、
  環境・社会報告書を取り寄せようと某企業の「お客様相談室」に電話をしました。
  すると、電話は工場につながり、
  「自主行動基準って何ですか?こちらでは分からないのでお客様相談室の担当者から電話させます」と
  その場での回答が得られませんでした。
  その後の担当者からの折返し電話では、
  「自主行動基準はあるが、公開していない。何のための調査か?
   書面で請求するように。電話で答えた内容も、企業名を特定して公表することはお断りする」と
  言われてしまい、入手を断念せざるを得なかったのです。

   おそらく、「企業の情報は社内と取引先に開示すべきで消費者に開示する必要はない。
  自主行動基準も社内の人間が理解し、遵守するものだ。
  何で社外に公表しないといけないのか。そのような必要はない」という意識によるものでしょう。
  公表して消費者の評価を仰ごう、消費者の意見を聞こうという姿勢が見られません。
  果たして、このような姿勢で消費者との信頼関係は築くことができるのでしょうか。

   消費者との信頼関係を築くためには不利益情報を含めた情報開示が不可欠です。
  なぜなら、消費者は企業から情報が開示されなければ
  その企業の姿勢を知る方法がないからです。
  企業の積極的な情報開示と取り組みによって消費者の不安は解消され、
  企業に対する信頼が高まると言っても過言ではないでしょう。

  今後の企業の情報開示と具体的な取り組みに期待したいと思います。


    


  ◆コンプライアンス経営研究会の今後

  
私たちコンプライアンス経営研究会(通称:Compass)は
 消費者と企業を信頼関係で結ぶための円を描くコンパスを目指しています。
  今後は自分たちコンプライアンス研究会(Compass)の自主行動基準を策定・公表していきます。
 そして、より一層、調査、学習、研究を重ね
 「コンプライアンス経営研究会(Compass)が提唱するコンプライアンス」という概念を明確にし、
 広く公表していくという目標を掲げ活動していきます。