4.今後の課題と提案

   コンプライアンス経営は、企業活動が消費者の信頼を獲得していくためには
  最低限果たすべきことがらである。その際に重要な役割を果たすのが自主行動基準である。

   今回の当研究会の調査は、企業がコンプライアンス経営の実践として、
  自主行動基準を策定・公表しているか、また消費者の信頼獲得のための取り組みを行っているかどうかを
  調査したものである。

   そして調査の結果、次のことが明らかになった。

    @ 自主行動基準の策定・公表が進んでいるもののまだ十分とはいえない。
    A 自主行動基準の「消費者重視の姿勢」の明示には抽象的な表現が多いが、
      企業に中には具体的な記載をしている例もいくつか見られることから、今後の広がりが期待される。
    B コンプライアンス経営の具体的取組みは進んでいない。
      情報開示の充実も含めて積極的な取り組みを行うことが求められる。
    C 消費者の声の把握と経営への反映については、企業によって差異が見られる。
      積極的に消費者への情報開示を行うなどコミュニケーションに努力している例も見られるが、
      表面的な言葉だけに終わっているケースも少なくない。
    D 安全性など消費者の不安や関心については、十分とはいえないが、
      企業の意欲的な情報提供の例が見受けられた。
    E不利益情報の開示については、特に自主回収した商品を例にあげ、
      結果報告がなされているかどうかを検証したが、実施している企業は一社もなく、
      今後の課題が大きい。

     以上、食品関連企業のコンプライアンス経営の取組みについての課題を探ってきたが、
     消費者との信頼関係構築にとって重要な視点として次の2点をあげたい。



         @抽象ではなく具体的な取り組みを行う

         A公平・客観的な情報開示を行う



 
 
  特に企業は自社にとってメリット情報のみを載せようとする傾向が顕著であり、
  不都合な情報を隠す傾向にあるように感じられる。
  「こんなにやっています」という情報発信は企業が考えるほど消費者には届かないものである。

   むしろ公平あるいは客観的な視点で率直に事実をいい面も悪い面も含めて開示する姿勢と、
  品質管理など約束したことをどのように改善したのかなど具体的に報告すること、
  さらには消費者に関わる情報を速やかに報告することが、信頼獲得には欠かせないのではないだろうか。

                                                              
 以 上